インプラント治療
Total:6871 Today:2 Yesterday:0
インプラントの目次
- インプラント
インプラントの概要
インプラントとは歯のないところへ、チタンもしくはセラミックのスクリューを打ち込んで、その上に歯や入れ歯を安定させる方法です。
周囲の歯を削ったりすることなく、かむ能力を飛躍的に回復させますが、残念ながら、高額で医療保険適応ではありません。
当院では、なるべくインプラントなどの自費治療以外の保険治療で対応して、それで満足されない方のみにインプラント治療を施す方針です。歯のないところへ歯を立てることは、歯科医冥利に尽きますが、基本方針は「まずはインプラントありき」とは思っていません。
院長は他院で埋入されたインプラントのトラブルケースをカバーした経験を、京大病院にて数多く積んでいます。埋移入させるインプラントメーカーにご希望のものがあれば、問題を感じている数社をのぞいて、なるべく対応する方針にしています。
レントゲンや手術管理等で、京大病院、宇治武田病院、その他医療連携病院にお願いをすることがあります。なるべく、医療連携病院への通院回数を減らせるよう努力します。
ここでは、編纂に関与した京都大学病院で使われているインプラント用マニュアルを一部紹介します。
インプラント治療に興味ある方々へ
乳歯、永久歯に継ぐ第3の歯とまで言われているデンタルインプラント(インプラント義歯)の歴史は、古代文明までさかのぼることができます。長い歴史の中で、多くの歯科医や科学者が試行錯誤を重ね、現在のデンタルインプラントシステムができあがって来ました。その過程には多くの研究と、失敗と改良があり、我々も試行錯誤を行いながらここまでやってき来ました。このような歴史あるため、この小冊子をお読みになっている方々の中には、デンタルインプラントでイヤなめにあった方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、現在では、デンタルCTをはじめとする診断方法の確立、骨と癒着する材料の発見、インプラント形態や表面構造の向上、骨再生手法の研究の成果、より洗練された手術方法の開発、術者のトレーニング機関の設立等により、きわめて安全で生着率が高く、審美性の増した、信頼性の高いデンタルインプラント治療が行われています。当京都大学病院歯科口腔外科は、そのデンタルインプラント治療機関として、20年近くの歴史があり、また単なる治療機関としてだけでなく、よりよいデンタルインプラントシステム開発の研究機関及び術者の教育機関として人類に貢献しています。平成6年12月1日にはその貢献が認められ、当科のデンタルインプラント治療は京都大学病院の高度先進医療の一つとして厚生大臣に承認されました。
常に信頼性の高いデンタルインプラント治療を行えるよう心がけている我々京都大学歯科口腔外科インプラント組織再生外来チームは、皆様の納得のいく治療の手助けとなるよう、この度この小冊子を改訂致しました。この冊子ではデンタルインプラント治療と、インプラントを安全に植立する場としての骨と周囲の軟組織を作る組織再生治療について説明しています。
この小冊子からインプラント治療の概略をご理解していただければ幸いですし、読後に生じる疑問を我々に投げかけることにより、より深い理解をしていただき、治療全体について理解し納得した後に、我々の薦めるインプラント治療を選択していただければと願っています。
2005.01.01
インプラント治療の Q and A
この冊子ではインプラント義歯について以下のことを説明しています。
Q1. インフォームドコンセントとは?
インプラント治療では治療に先立つインフォームド・コンセントが不可欠とされます。インフォームド・コンセントとは 「患者が自らの病状について正確な情報を得て、その医療行為の目的や方法、危険性、代替治療法などについての正しい説明を受け、理解した上で自主的に治療方法を選択・同意・拒否できる」 ことです。
しかし、我が国の医療現場では、患者様が正しい説明を受け理解した上で、治療法を自主的に選択することがなされてない場合もあります。 我々は、患者主体の医療の実現と患者権利の保護を目的として、科学的な根拠に基づいたインフォームド・コンセントを行っています。そのインフォームド・コンセントの手順をこれから簡単に説明します。
インプラント治療に興味を示された患者さまには、簡単なパンフレットを読んでいただきます。
治療を希望されれば、パノラマレントゲンと研究用模型採取、歯周検査を致します。その後治療の概略、特に治療期間と治療費の概算の説明をします。
後日、より詳しい検査と具体的な治療方法の説明をします。この時、我々の説明が十分でない場合は、何度でも理解して御自身で判断ができるまで説明いたします。
患者様が1人では決めきれないような場合には、患者さまのご家族や第三者の立ち会いをお願いしたり、かかりつけの歯科医や紹介医にもよく相談されたりすることをお薦めします。
実際に治療を始める前には完成予想模型(理想模型)(12ページ図6参照)を提示させていただき、必要に応じてCT等の撮影を行い、インプラントだけでなく他の問題点も検討した一口腔単位の具体的な治療計画を示します。
治療開始後は徹底した歯磨き指導などの予防治療を行います。また当然のことながら、治療ステップ毎にも詳細な説明を追加致します。
インプラント治療の目次にもどる
Q2. デンタルインプラント(人工歯根)とは?
図1 固定式ブリッジの構造
歯の根までが無くなった部位に人工の歯を入れるには、残った隣在歯を利用して固定性のブリッジ(図1)を作製することが一般的です。
しかし、この方法では、残念ながら健康な歯を多く削らなくてはなりません。
いったん削られた歯は、う蝕(虫歯)や歯周病(歯槽膿漏)になりやすく、これらの歯を失うと、さらに大きなブリッジ(架橋義歯)や取り外しの入れ歯(可撤性義歯)に再度作り換えなければなりません。
また、削られた歯の健康を保つには、今まで以上の歯磨きと定期的なかみ合わせの調整が欠かせません。
一方、取り外しの入れ歯で、うまくあわない場合は、食事が制限され、発音をしにくくなったり、「大きく口を開けると入れ歯が 飛び出さないか」と不安な気持ちになり、会食やスポーツなどの積極的な生活を十分楽しめないようなことが起こります。
図2 デンタルインプラントの一般的構造
これらの問題点を避けて、歯がないところに歯を入れる方法に人工歯根があります。人工歯根のことを英語ではデンタルインプラント (dental implant)と呼び、歯科におけるインプラント治療とは、一般的に人工歯根による歯の修復(補綴)治療を示します。
現在用いられている多くのインプラント材料は純チタン製で、骨との親和性が極めて高い性質を有しています。
そのため、インプラント体を骨の中に植立させて一定の治癒期間を経ると、インプラント体の周囲に新しい骨がとり囲み、その骨がインプラント体との直接結合を起こします(図1)。
この現象は約35年前にP-I.ブローネマルク教授により発見され、ラテン語で「骨」を意味する「os (オス)」と、英語で「結合、一体化」を意味する「integration (インテグレーショ ン)」の合成語であ「osseointegration (オッセオインテグレーション:骨結合)」 と呼ばれています。
現在ではこのチタンを用いた骨結合型インプラントシステムは世界の主流となっています。
インプラント治療では失った歯の部分のあごの骨(顎骨)にチタン製の人工歯根(フィクスチャー)を植立し、その上に人工の歯(上部構造)を固定します(図2)。インプラント治療によって歯の欠損を修復すると、取り外しの入れ歯の異物感から解放され、もとの自分の歯とほぼ同じように食物を噛むことができます。
また、総入れ歯の場合でもインプラントを植立しそのインプラント体に入れ歯を固定できるようにすれば、従来の入れ歯でよく問題となった「すべり」や「ずれ」による粘膜面の傷や、入れ歯と粘膜間への食物の介在による痛みも解消されます。インプラント義歯によって噛む能力(咀嚼機能)が回復すると、バランスの取れた食事も摂取できるようになり、旅先や人前においても気兼ねなく食事や会話が楽しめます。
現在日本で発売されているインプラントシステムは約数十種類あると言われていますが、当院では京都大学医学部附属病院医療材料委員会で承認された三種類のインプラントシステムを使用しています。具体的には、スウェーデン製のブローネマルクシステム(図4)とアストラシステム(図5)、スイス製のITIデンタルインプラントシステム(図6)で、これらは世界中の大学病院や歯科医院で使用され、基礎研究と臨床研究が十分に行われており、その高い生着率を評価された、信頼のおけるシステムです。
図4:ブローネマルクシステム 図5:アストラシステム 図6:ITIシステム
Q3. 骨結合型インプラントの治療成績は?
1) 代表的な学術論文によるインプラント治療成績
[ブローネマルクシステム] Adellらによる上下無歯顎症例の5年累積生着率は、上顎92.0%、下顎99%、van Steenbergheらによる上下部分欠損症例の5年累積生着率 は91.6%、 Henrryらによる上下一歯欠損症例の5年累積生着率は、上顎96.6%、下顎100%と報告されています。
[アストラシステム] Arvidsonらによる下顎無歯顎症例の3年累積生着率97.8%、Palmerらによる上下部分欠損症例の3年累積生着率100%、 Karlssonによる上下一歯欠損症例の2年累積生着率は100%と報告されています。
[ITIシステム]Buserらによる5年累積生着率は98.2%,Weberらによる5年累積生着率は99.1%と報告されています。
2) 京都大学口腔外科における治療成績
京都大学口腔外科では1989年来、過去10数年間に多数のインプラント治療を行ってきました。これらの症例のうち経年的観察が可能であった136名(男性57名、女性79名、平均年齢47.9歳)、177顎(上顎73顎、下顎104顎)に植立を行ったフィクスチャー704本を研究対象として、インプラントシステム別および部位別の短期的および長期的な予後を検討しました。システム別、部位別のフィクスチャー粗生着率はブローネマルクシステムでは、上顎前歯部92.3%、上顎臼歯部92.1%、下顎前歯部100%、下顎臼歯部95.4%、アストラテックシステムでは上顎前歯部100%、上顎臼歯部100%、下顎前歯部97.4%、下顎臼歯部99.2%が示されています。
ブローネマルクシステム アストラシステム
上顎前歯部 92.3% (96/104) 100% (72/72)
上顎臼歯部 92.1% (72/79) 100% (69/69)
下顎前歯部 100% (127/127) 97.4% (38/39)
下顎臼歯部 95.4% (83/87) 99.2% (126/127)
合計 95.2% (378/397) 99.3% (305/307)
表1:京都大学口腔外科における治療成績(システム別部位別のフィクスチャー粗生着率
これらのうち骨が軟らかく、予後が悪いといわれる上顎臼歯部においても骨移植部97.2%(35/36)、非骨移植部91.3%(63/69)と比較的良好な成績が得られました。
またLife Table分析による全体的の5年累積生着率は上顎93.4%、下顎96.6%を示しています。フィクスチャーの脱落は、一次手術(インプラント植立手術)から二次手術(アバットメント連結手術)までに7本、二次手術から補綴*までに5本、補綴後に9本の計21本であり、上部構造装着後2年目以降のフィクスチャーの喪失はいずれのシステムにおいても認めませんでした。
(以上、2000年11月第4回顎顔面インプラント学会抄録より抜粋)
Q4. インプラント義歯による噛む能力(咀嚼機能)は?
1) 学術論文による骨結合型インプラントによる咀嚼機能改善
芝らは咬合力計や食品粉砕咀嚼検査法を用いインプラント義歯装着患者の咬合力及び咬合咀嚼能率を測定しました。それによると、インプラント義歯の咬合力の平均値は切歯部では15.6Kg、臼歯部では33.8Kgを示し、天然歯の切歯部での13.2Kg、臼歯部での32.0Kgと比較するとほぼ同等かそれ以上の咬合力を得ることができることが判りました。
咀嚼能率に関して言えば、インプラント義歯装着者は43%の咀嚼能率があり、通常の義歯装着者の咀嚼能率の35〜38%よりも大きいことが明らかにされています。
上下の歯の間に介在させた薄膜の認識試験では、天然歯列者で20μm、インプラント義歯装着者で50μm、従来の義歯装着患者で 100μmの限界値を示しており、インプラント義歯は天然士と比較するとやや認識力は劣りますが、単なる義歯に比較するとより薄い物も認識できるとの結果となっています。
これらのことはインプラント治療により食感の改善が得られることを示唆しています。
2) 京都大学医学部口腔外科における骨結合型インプラントによる咀嚼機能改善
表2 佐藤らの食物表
我々は京都大学で治療を行ったインプラント義歯治療患者25名に対し、佐藤らの食物表(表2)を用い、アンケートによる咀嚼機能評価調査を行いました。
その結果、全部欠損例(無歯顎例)では術前29.1点から治療後の75.4点へ、部分欠損症例では、前61.9点から治療後の86.4点へと高い咀嚼機能の改善を得られました。
Q5. 他の治療法の選択の可能性は?
歯が欠損した場合には、歯の欠損形態や欠損本数によって、従来からの方法を用いた下記の治療法の選択が可能です。
とくに残りの骨が極めて少ない患者さまや何らかの基礎疾患をお持ちの患者さまには、人工物を体内に埋入するインプラント治療は必ずしも適当とは言えません。
1) 架橋義歯(残存した歯をつないだブリッジ)
力学的に十分に耐えられる状態の残存歯がある場合には、ブリッジという方法は極めて予知性の高い方法です。
しかし、この方法では健康な歯を削らなくてはならない場合もあり、長期的に見ると、虫歯(う蝕)や歯槽膿漏(歯周病)になりやすい場合もあります。
2) 可撤性義歯(取り外しの入れ歯)
よく合った取り外しの入れ歯では、食事や会話に苦労することは、ほとんどありません。
しかし、多くの場合、取り外しの入れ歯では食事が制限され、入れ歯の内側に食渣がたまりやすく、ずれたり滑ったり、また支えとなっている歯の負担が大きくなり、歯肉や歯を痛めます。
3) 補綴前外科手術(入れ歯を入れる山や谷を作る手術)
歯がなくなると歯槽骨が痩せて入れ歯をのせる山が低くなります。骨結合型インプラントが開発される以前には、入れ歯を安定させるために、骨移植や粘膜移植などの山や谷を作る手術がよく行われていました。
現在でも、症例によってはこの補綴前外科手術は極めて有用で、とくに上顎の全部床義歯の維持と安定は改善されます。
またこの手術は健康保険で全て行うことができ、インプラントのような高額な治療費はかかりません。
4) 歯牙移植
将来必要としない埋伏歯(骨の中に埋まっている歯)や咀嚼機能上必要としないと判断される歯(親知らずなど)を欠損部へ移植する方法があります。
この方法は移植歯が移植部位の形によく合う場合には予知性の高い方法だと言われています。
5)何も入れない(症例によっては義歯やブリッジ等の治療を行わない)
口の中に入れ歯やインプラントなどの異物を入れることがいやな場合には、欠損部位に何も入れないことも治療法の一つとして選択可能です。
しかし歯を入れない場合は、対合の顎の歯が挺出したり、近接した歯牙が無い方へ倒れ込んだりして、歯磨きしにくくなり、歯周病や虫歯の誘発しやすい噛み合わせになります。
Q6. インプラント義歯の治療ステップは?
1) 診査と治療計画 後のインプラント前治療
1)-a. インプラント前治療
インプラント治療は長期にわたり、しかも高額なため、簡単な治療法とはとても言えません。
そのため口腔内を全体的に把握し、将来の口腔内の変化を見通し治療直後の状態を可能な限り長期にわたり維持できる様に治療を進めなくてはなりません。
従って、残存歯がある場合、虫歯や歯周病の検査を先ず行い、インプラント手術前に問題のあるところをきちんと治療しておかなければなりません。
またインプラント補綴を装着した後には、インプラント周囲炎を起こさないようにするため、正しい歯磨きをする必要性が生まれてきます。
手術に入る前に、歯石の除去等の歯周病治療を徹底して行い、正しい歯のみがき方の訓練を行います。
症例によっては手術前後に、保存不可能な歯の抜歯や歯科矯正治療が必要となることもあります。
もちろん全身検査も不可欠で、程度にもよりますが、心疾患、糖尿病、自己免疫疾患、喫煙等の理由でインプラント治療を行えないこともあります。
1)-b. 手術の準備
虫歯治療、歯周病治療、矯正治療、全身疾患のコントロール等のインプラント前準備が終わると、手術に取りかかる準備をします。
先ずインプラントの植立前に歯の型をとり、最終的な出来上がりの状態を模型上で再現します(理想模型)。
この理想模型に従いレントゲンステントやサージカルステントを作製し、模型上のインプラント埋入部位と残っている骨との関係をレントゲンで詳しく調べます。
その結果からフィクスチャー埋入位置、上部構造の様式、骨移植などの必要性を決定します。
図6: 理想模型 図7: ステント
最終補綴物の形態をロウで作り上げた模型 レントゲン撮影や手術の時に使用するプラス説明や治療計画のために使用する。 チックの理想模型。
特にレントゲンステントを口腔に装着してレントゲンを撮影することで、下歯槽神経や副鼻腔などの解剖学的な位置関係の重要な情報を得ることができます。
ここ数年デジタル画像の進歩からレントゲンステントを装着してCT撮影を行うと、図8の様にコンピュータ上で手術のシュミレーションが行えるようになりました。
図8: 歯槽部再構築断層像(CT像)
上顎骨へのインプラント植立および骨移植シミュレーション:緑色が移植すべき骨の形態、ピンク色もしくは透明の長方形が、植立予定のインプラントの長さ及び太さを意味する。
これによって移植すべき骨の量やあい埋入インプラントの形状が決定される。
1)-c. インプラント前顎提形成治療
長期的な予測の基に、インプラント治療を成功させるためには、インプラントを植える骨の量や質、粘膜の状態、顎の形態等をインプラントに適した状態にするため、顎提形成手術を行うことがあります(Q8参照)。
以前は骨の量や形態がインプラントに適していないという理由で、インプラント治療を行えない場合もありましたが、最近は自家骨移植による組織再生治療等が発達したため、たいていの場合、インプラント治療を進めていくことが可能です。
もちろん骨の量と形がインプラントに適している場合は、この顎邸形成治療は必要ありません。
2) インプラント(人工歯根)の植立手術
図10 サージカルステントを用いた埋入手術
インプラント植立手術は、清潔な手術室で局所麻酔下もしくは全身麻酔下で行います。通常2〜3本までの植立は外来通院で行いますが、植立本数が多い場合や骨移植を必要とする場合には入院して手術を行います。スクリュー型のチタン製のインプラントを、サージカルステント(手術時にインプラントの植立位置、角度、深さを正確に合わせるためのプラスチック製のガイド)に従って顎骨の理想的な位置に正確に植立します(図10)。
治癒するには、通常2カ月からから8カ月程度の治癒期間を必要とします。手術後は、縫合部の治癒を約2〜3週間待ち、その後には、仮の義歯を調整して使用します(図11)。
図11 インプラント埋入直後の仮義歯
インプラントと骨がなじむにはある程度の時間がかかります。特にインプラントと骨の間隙に新しい骨ができてインプラントの固定性(安定性)が得られるには、下顎で24カ月、上顎で4か月から8カ月程度の治癒期間を必要とします。上顎と下顎だけでなく、個々の患者さまの間でも治癒期間には差があります。当院ではこうした治癒期間を決定する一つの目安とするために、オステル(図12)というスエーデン製の最新の機器を使用してインプラント安定性を測定する場合もあります。
図12 インプラント安定性測定器 オステル
手術前後の注意点については、別紙(手術について)で詳しく説明しています。また最近ではインプラントの初期固定性(安定性)を手術時に測定し、良好な場合には次のステップのアバットメント連結を同時に行っています。
3) アバットメント連結(二次手術)
図13:ヒーリングアバットメント
(粘膜貫通部品)を連結
インプラントが骨結合したら、歯肉に小切開を加え、インプラント体の頭出しをし、ヒーリングアバットメント(粘膜貫通部品)を連結します(図13)。
この状態で歯肉や軟組織が治癒するのを1週間から6週間程度待ちます。
#clear
4) インプラント義歯の作製と装着
図14 インプラント義歯の作製
歯肉が治癒した後で、義歯を作製するための型を採ります。歯の形や色を決め、上部構造を人工歯根に固定します。(図14)上部構造は通常、ねじ止めにて行いますが症例によっては取り外しのできるセメントで合着します。インプラント体や周囲の組織に何か問題があった場合には、上部構造を壊さないで取り外しできるようにしておくことが、一般的なブリッジの装着と違い、インプラントの上部構造の装着の重要なポイントです。
インプラント義歯の作製は、通常の天然歯をつなぐブリッジと異なり極めて精密に作製することが要求されます。そのため型を取る回数や通院回数はブリッジよりも多く必要で、上部構造の作成期間は最低1ヶ月半から2ヶ月を必要とします。 なお、症例によっては仮の歯を2〜6か月間入れて歯肉の状態や噛み合わせが落ちつくのを待ったり、また歯並びの悪い症例ではインプラントを土台として矯正治療を行う場合もあり、6ヶ月から2年程度の矯正治療が余分に必要な場合があります。
5) 定期検診
図15 インプラントの長期維持に欠かせないセルフメインテナンス
インプラントを長期にわたり問題なく使用できるには、セルフメインテナンス(図15のようなインプラント義歯の清掃)に加えて歯科医師による上部構造を連結しているネジのゆるみの確認、咬合調整、歯周診査や衛生士によるプロフェッショナルメカニカルトゥースクリーニング(口腔清掃、歯石除去、表面研磨)などの定期検診を欠かすことはできません(後述)。
Q7. 無歯顎のインプラント義歯はすべて固定式ですか?
図16 アタッチメントを利用したオーバーデンチャー
[添付] 上顎と下顎で少し状況が変わりますが、無歯顎症例(歯が1本もない症例)では基本的にはインプラントの植立本数により取り外し式か固定式かが決まります。また、骨の吸収が大きい場合には、審美性と発音を考慮して、インプラントの植立本数に関わらず、クリップや磁石による維持を求めた取り外し式の入れ歯(オーバーデンチャー)になることもあります(図16)。
#clear
1)上顎
一般的に、6〜8本以上のインプラントが植立されれば、上顎の固定性のブリッジが可能となります。これ以下の本数では、通常はオーバーデンチャーになります。
2)下顎
一般的に、5〜6本以上のインプラントが植立されれば、下顎の固定性のブリッジが可能となります。これ以下の本数では、オーバーデンチャーになります。
Q8. インプラントを植立する骨がない場合は?
インプラント植立のための骨がないにもかかわらず、インプラントを希望される場合には骨移植やGBR法などの組織再生治療があります。これは将来インプラントを植える場所を作ったり、顎骨の形態修正するために、下顎オトガイ部の骨、腰の骨(腸骨)、足の骨(脛骨)を移植したり、仮骨延長法(骨をのばす方法)により骨の量を増加させます。
これらの骨移植手術、組織再生治療は大きく分けて、?オンレー法(図17)、?サンドイッチ法(図18)、?サイナスリフト法(図19)、?仮骨延長法(図20)、?組織再生治療(GBR法等)(図21)、の5つの方法があります。これらの手術単独または組み合わせによりインプラントの植立が可能となります。またこれらの手術はインプラント手術と同時に行えるものもあります
図17: オンレーグラフト :上顎歯槽部にブロック状の骨を上乗せすることにより移植する方法。
図18: サンドイッチグラフト : Le Fort?型骨切り術を応用し上顎骨を骨切りし、ブロック状の骨をはさむようにして移植する方法。
図19: サイナスリフト: 上顎洞前壁を切除し、(図15-3a)上顎洞前壁を洞内部に折り込み、ここから洞底部に骨を移植する方法。
図20 仮骨延長法:骨を一部切断し、ねじ式の器具を使用して、1日0.5mmから1.0m骨の延長を行い、最終的には10から20mm程度の喪失した歯槽骨を骨移植なしに再生させる方法。(マーチン社資料による)
図21 組織再生療法:人工膜で骨欠損部スペースをカバーし骨の造成を図る方法です。最近では培養骨細胞を充填する方法も開発されつつあります。
写真
その他の補助治療方法
骨移植症例やインプラント植立部位の創傷治癒が遅い症例では、高気圧酸素療法を応用する場合もあります。この方法は、高気圧下で純酸素を吸入させて行う治療法で、これによって創傷治癒過程が賦活し、組織の血管新生を促進させ、インプラント周囲の骨や粘膜の治りを良くします。
Q9. インプラント義歯は天然歯と同じですか?
↑
歯根膜
図22 天然歯 インプラント
インプラントは骨と直接に結合するため、天然歯に存在している歯根膜がありません(図22)。歯根膜は歯と骨の間の膜状の靱帯で、歯根膜中には知覚神経が存在し、硬いものや軟かいものの識別ができる仕組みとなっています。そのため歯根膜の無いインプラントでは、噛んだ感触が天然歯と比較すると弱いことが解っています。また、天然歯では結合組織や上皮は比較的強固に歯頸部で接合していますが、インプラントではその接合の度合いが弱くなっています。このため、インプラント義歯の清掃を怠ると炎症が起こりやすく、こうした場合には、歯肉が腫れたりインプラント周囲の骨が破壊され、ひどい場合にはインプラントが抜けてしまいます。こうしたことを防止するためにインプラント義歯装着患者では、天然歯と同じぐらいかそれ以上の歯みがきの励行が大切となります。
インプラント義歯では歯根膜を欠きますが、前項で紹介したよう通常2〜3ヶ月後には食べ物の触感がある程度わかるようになり、咀嚼機能は大きく改善します。また、審美性(見た目の美しさ)については、個々の患者さまで残っている骨の量や形、さらに歯肉の厚みや色により審美改善の程度は異なり、天然歯と全く同じものに仕上げることは簡単ではありません。
Q10. 治療期間はどのくらいですか?
前述の各ステップに示すように、インプラント治療では、まず、インプラントが骨と結合するのに、普通は、下顎で2〜4か月、上顎で4〜8か月かかります。骨移植を伴う症例では通常は骨を移植して4カ月から6か月の治癒期間の後にインプラントの植立が可能となります。さらに、歯の欠損部位だけを直して治療が終了することは稀で、矯正治療や歯周治療を合わせて行う場合が多く、全体の治療期間が1年〜3年かかることも稀ではありません。このようにインプラント治療は手間と時間がかかりますが、生体反応に合わせて科学的なステップを踏むため、この程度の長い治療期間は必要です。しかし症例によっては治療期間の短縮を図ることもある程度可能な場合もあり、治療期間を特に気にされる場合にはインプラント専門外来の担当医師によくご相談下さい。
図23:治療過程の概略
インプラント治療の目次にもどる
Q11. インプラント義歯は全ての患者さまに適していますか?
1) インプラント治療に適した症例。
・残っている骨の量と質が適している方。
・手術部位の骨に感染などの異常がない方。
・残存歯の歯根に病巣がない方。
・歯周病がコントロールされている方。
・重篤な全身疾患などの問題がない方。
2) インプラント治療に適さない症例
・あごの骨の量が少なくインプラントの植立が不可能な方。
・アルコール依存症および覚醒剤使用者。
・インプラント体や上部構造の金属に対しアレルギーのある方。
・ヘビースモーカーで、術前術後の禁煙が不可能な方。
・糖尿病のコントロールができてない方。
・その他の重篤な全身疾患をお持ちの方。
・医師との協調が得られない方。
3) インプラント治療が特に有効な症例
・事故や口の中の腫瘍手術などにより歯やあご骨が大きく欠損した場合などで通常の入れ歯が入らない場合。
・入れ歯ではどうしても吐き気がする方。
Q12. 合併症、偶発症、後遺障害にはどのようなものがありますか?
当院で行なうインプラント手術に関しては通常は問題となるような重い障害が残るこることはほとんどありません。しかし、どのような手術や治療においても、合併症や偶発症などの問題が起こる可能性は必ずあります。とくに顎骨内に異物を埋入するインプラント手術では、多様な合併症、偶発症、後遺障害の可能性があることを十分に理解してください。以下それぞれの合併症について述べます。
1)手術に伴うもの
手術に伴う合併症、偶発症、後遺障害は、主に機械的損傷、創部の腫脹、および術後の腫れが原因として考えられます。また時期的に見ると手術時から短期間に認めるものと長期的に症状が固定されるものに分類されます。以下には、起こる可能性のある全てではありませんがその代表的な臨床症状と対応の概説を示します。
[手術時から短期間のもの]
臨床症状:出血、術後の腫れ(発赤腫脹)、痛み、熱皮下出血班(青あざ)ができ、まれには口唇の知覚異常(くちびるがピリピリするなどの感覚異常)、開口障害(口が開きづらい)、顎関節の痛みや音がする、口角炎(口を開けると口角が裂ける)、等があります。また細菌感染や創部の粘膜が開き、治癒が遅れる場合もあります。極めてまれなことにはインプラント体の上顎洞への迷入、ドリリングのバーの破折パーツ器具の誤飲誤嚥、隣接歯の削除、隣接歯の脱落、歯槽骨骨折、下顎骨折、などの可能性があります。
対 応:上記の手術中の出血を含めた合併症・偶発症などについては患者さまに最善と思われる処置を適切に行ないます。また外来通院による手術においても、担当医が局所および全身的に管理が必要と判断された場合には入院していただく場合もあります。また手術直後から数週間以内の通常に見られる術後の腫れ(発赤腫脹)、痛み、熱皮下出血班(青あざ)症状等に対しては指示された抗生剤の服用や場合によっては抗生剤の点滴、軟膏の塗布でほとんどのケースは数週間で自然に改善します。まれですが感染が続いたり、骨が露出するなど局所治癒が遅れる場合には骨移植の項で紹介した高圧酸素療法を併用することもあります。また、治癒が長引いたり遅れたりする場合には自宅での安静療養が必要になります。
[長期的なもの]
臨床症状:唇や舌の知覚麻痺(感覚がなくなる)の長期化、骨膜炎、骨髄炎、骨壊死、副鼻腔炎(上顎洞炎)などがあります。
対 応:こうした術後の長期的な合併症・偶発症・後遺障害については、患者さまに最善と思われる処置を適切に行ないます。例えば、当院では舌や口唇の知覚神経麻痺についてはビタミン剤を中心とした薬物療法や星状神経節ブロック等の治療で対応します。また、インプラント周囲の骨に炎症が継続する骨膜炎、骨髄炎に対しては抗生剤の投与や高圧酸素療法を行ないます。さらに、上顎洞炎などになった場合は、上顎洞洗浄や感染源のインプラントを取り除く手術を必要とします。
2)上部構造の歯に伴うもの
インプラント以外の歯の治療と同様に、歯や上部構造の磨耗や破折する可能性があり、極めて硬いものや石などを噛むと陶材(セラミック)の人工の歯は割れます。また、インプラントの上部構造はネジ構造でできており、歯を固定した小ネジのゆるみや破折が生じる可能性があります。通常のネジのゆるみは、決められた定期検診時のチェックの対象で、ゆるみかけていれば問題となる前にしめることができます。また、時間の経過とともに上部構造の歯や歯肉色の変色の可能性があります。
3)インプラント体の破折と脱落
インプラント周囲の炎症が続くと、骨結合が喪失してインプラント体が脱落することがあります。過度の力が加わるとインプラント体が破折することがあります。破折したインプラントは通常は除去し、可能であればインプラントの再植立を行います。一方、破折したインプラント体の周囲の骨が健康である場合は、除去しないでそのままで経過観察する場合もあります。こうした偶発症を防止するために、スポーツ時や睡眠時の予想外の噛みしめ予防用のマウスピース(スポーツガードやナイトガード)の装着を指示させていただいてます。
4)インプラントが骨と結合しない場合
本学における治療成績は世界的水準に達しておりますが、残念ながらインプラントの生着率は100%ではありません。少ないながらもインプラントが骨と結合しない場合には、一定の治癒期間をおいてインプラントの再植立を行う場合もあります。
5)その他(喫煙の影響)
喫煙の影響に対しての数多くの報告がなされています。代表的な研究はMoyらの報告で、540人の患者のインプラントの失敗率を喫煙者と非喫煙者で比較しています。喫煙者で11.28%、非喫煙者で4.76%の失敗率が示され、喫煙者では非喫煙者の2〜3倍の失敗が起こるとの報告です。 当院では、インプラント治療を希望される方には、禁煙もしくは節煙(少なくとも手術の1週間前より術後8週間は禁煙)を指導しています。残念ながらヘビースモーカーの方は治療の対象とはしていません。
Q13. どの程度の費用がかかりますか?
1)全額自費治療の場合(高度先進医療に該当しない場合)
基本的にインプラント治療は健康保険がカバーしていません。そのため独立行政法法人病院間で決められた自費値段設定に従い、治療費の全額は自己負担となります。つまりインプラント義歯の費用に加えて、一般的な診療費(レントゲン、血液検査、投薬、その他入院費など)すべてが自己負担となります。
2)高度先進医療と承認された場合(一部健康保険がカバーする場合)
「通常の義歯の装着が困難な顎骨に異常のある歯牙欠損症例」に限り、一般的な診療費(レントゲン、血液検査、投薬など)には健康保険が適応され全体の治療費が減額されることがあります。具体的には腫瘍等で歯と顎の骨が大きく失われた場合や、顎骨に極度の骨吸収がある場合で、通常の義歯が装着困難な場合です。ちなみに、京都大学医学部口腔外科は、その優れた治療実績が認められ、日本で5番目のインプラント義歯の高度先進医療機関として、1993年12月1日に厚生省に承認されました。
高度先進医療の場合も自費値段設定の場合も個々の費用については年度ごとに少しずつ改訂されています。治療費については治療契約時の費用が最後まで適用されることをご了承下さい。以下、費用負担の具体例を提示しますが、これらは平成16年12月1日現在のものです。
具体例1.上あごの奥歯が4本欠損 (図24)
図24 24:上顎臼歯部4歯欠損例 補綴前 同 補綴後
上あごの奥歯が4本欠損となっただけの場合には、自費料金となります。3本のインプラントを植立して治療した場合には、インプラント植立時に 円、義歯が装着時に円の計 円がインプラ ント義歯の費用として必要とされます。その他、諸検査費用、薬代等も全額が追加自己負担となり 円から円程かかります。
図25 上顎3歯欠損症例 補綴前 補綴後
具体例2.上あごの奥歯が3本欠損 (図25)
上あごの奥歯が3本欠損となった場合に2本のインプラントを植立して治療すると、インプラント植立時に 円、義歯が装着時に 円の計 円がインプラント義歯の費用として必要とされます。諸検査費用、薬代等も全額が追加自己負担となります。
具体例3.下あごの奥歯が右3本、左4本、計7本欠損 (図26)
下あごの奥歯が右3本欠損、左4本欠損となった場合に7本のインプラントを植立して治療すると、インプラント植立時に 円、義歯が装着時 円の計 円がインプラント義歯の費用として必要となります。この場合も諸検査費用、薬代等の全額は追加自己負担となります。
図26 下顎左側4本右側3本欠損(補綴前咬合面観) 補綴後咬合面観
具体例4.歯肉腫瘍によりあご骨を切除され下あごに1本の歯もない場合 (図27)
歯肉腫瘍などの手術で顎の骨まで切除せざるを得ず、その結果通常の入れ歯の装着がきわめて困難な症例には高度先進医療が適用されることもあります。この場合に5本のインプラントを植立して治療すると、第一次手術時に、772,900円、義歯装着時に576,900円の計1,349,800円がイプラント義歯の費用として全額自己負担となります。一方でインプラント義歯治療を行うのに要した一般的な診療費(レントゲン、血液検査、投薬、その他入院費など)には健康保険が適応され一部負担となります。
図27-A:下顎無歯顎(補綴前咬合面観) 図27-B:下顎無歯顎(補綴物)
図27-C:下顎無歯顎(補綴物咬合面観) 図27-D:下顎無歯顎(補綴後正面観)
(注)インプラント植立本数について:インプラントの植立本数は、1本の歯の欠損に対して1本のインプラントが理想ですが、具体例3(図25)のように3本の歯の欠損に2本のインプラントを植立してブリッジにする場合や具体例4(図27)のように10本の欠損部に5本植立してブリッジにする場合もあります。当院では、複数本欠損した臼歯部に、可能であれば3本以上のインプラントを植立し、力学的強度を強くするような設計を行っております
Q14. 定期検診は必要ですか?
天然歯の健康を維持するためにも普通6カ月に1度の検診とメインテナンス治療が必要となります。インプラントによる新しい歯を長く持たせるには、歯科医師による咬合診査や衛生士等による歯周検査とプロフェッショナルクリーニング(口腔清掃、歯石除去、表面研磨)などの定期検診を欠かすことはできません。当院では、上部構造装着後の1週後、2週後、4週後、2ヶ月後、3ヶ月後、5ヶ月後、9ヶ月後、1年後、以下経年的に6カ月に1度の定期検診を行います。インプラントの喪失は、多くの論文によって上部構造の装着後1年未満であり、最初の1年間の定期検診は極めて重要となります。
Q15. こわれた場合の修理費はどのようになっていますか?
当院では、インプラントの脱落や上部構造の破折等が以下の条件すべてを満たすと考えられる場合には、無償で修理を行います。
1) 患者さまの不注意や故意でない場合。
2) 指示された定期検診をきちんと受けていた場合。
3) 口腔清掃の自己管理がきちんと行われていた場合。
4) 指示されたスポーツガードやナイトガードを装着していた場合。
5) 上部構造装着後5年以内の場合。
機能する上部構造は金属、ねじ、ポーセレン、レジン(プラスチック)から構成されており、基本的には消耗します。このため5年経過後に修理や再作製が必要となった場合には、別途費用をご相談させていただきます。
Q16. かかりつけの先生とインプラント治療について相談したいのですが?
ご紹介をいただいた先生やかかりつけの先生などとインプラント治療についてご相談したいと考えておられる患者さまには、お手紙を添えて必要なエックス線写真や模型などを貸し出させていただきます。ご遠慮されることなく、気軽にお申し出ください。また、治療の終了した患者さまとインプラント治療を話題にした談話会を開催することもございますので、希望される方は主治医までご連絡下さい。
Q17. 治療はだれがやるのですか?
当院のインプラント治療にあたるスタッフは京都大学病院常勤の医師及び歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士、看護師、事務職員及び非常勤歯科医師から構成されます。医師及び歯科医師には、全身麻酔担当医、骨移植担当医、インプラント手術担当医、補綴修復担当医等の専門性の高い役割分担がなされています。また、歯科技工士、歯科衛生士、看護師、はそれぞれが重要な役目をになっています。そのほかリファーシステムと言って、インプラント手術を京大病院で、インプラントの上部構造体の作成を一般開業医で行うこともあります。虫歯などの治療は、かかりつけの歯科医師や一般開業医に依頼することもあります。当院は厚生省の指導する病診連携(病院歯科と歯科診療所との協力体制)を推進しており、専門性を高めながら患者様により満足いただけるようにしています。
Q18. 高度先進医療の適応症とは?
インプラント義歯は京都大学病院の高度先進医療の一つで、平成6年12月1日に厚生大臣に承認されました。このインプラント義歯の高度先進医療適応症は、「通常の義歯の装着が困難な顎骨に異常のある歯牙欠損症例」です。この制度では平成15年12月1日以降、厚生労働省は、「高度先進医療の適応症は、外傷、腫瘍、先天奇形等により顎骨欠損や変形大きい、通常の義歯の装着が困難な歯牙欠損症例に限定する。」よう指導しています。このため、この制度は通常の歯を失なわれた大多数の症例には適用できません。高度先進医療に該当しない場合には、独立行政法人病院間決められた適切なインプラント義歯の自費値段設定がされています。当笠置歯科口腔外科診療所は京都大学病院と連携し患者様の負担を少なくできるよう、サポートしています。